視聴覚文化研究会

AUDITORY VISUAL CULTURE STUDIES

 
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第6回芸術学研究会

特集「脳/美学――脳科学のイメージ(論)」

  • 2011年11月19日(土)13時〜 (聴講無料・来聴自由)
  • 会場:神戸大学文学部・A棟一階学生ホール 【会場案内
  • 発表者
    • 井上研(名古屋大学大学院)
    • 岩城覚久(関西学院大学大学院)
    • 真下武久(成安造形大学メディアデザイン領域講師)
    • 唄邦弘(神戸大学大学院)
    • 門林岳史(関西大学文学部准教授)
  • 主催:大学院教育改革プログラム 古典サロン「映像と諸文化」研究会
  • 共催:神戸大学芸術学研究会、視聴覚文化研究会
主旨

「脳の10年」とも呼ばれた1990年代以降、脳科学は「心」のメカニズムに関して次々と新しい発見をもたらしている。その成果はいわゆる自然科学の領域を超えて、人文学の領域にも少なからず影響を与えてきた。それは美学・芸術学とて例外ではない。「神経系美学」と呼ばれる分野は、脳科学を積極的に応用しながら美学を鍛えなおす新たな可能性を提示している。  しかし、視覚イメージと脳機能の関係を明らかにしようとするこうした試みは、その方法自体が脳をイメージ化し、解読する様々なイメージ実践(脳地図やfMRIなど)に基づいているということをしばしば忘れているようにも思われる。本研究会では、脳とイメージを媒介するこの脳=イメージに光を当てながら、脳科学と美学の結節点を探りたいと思う。

プログラム

司会:主旨説明(秋吉康晴/神戸大学)

       第一部:脳=イメージの認識論 (13:00~)

〇井上研(科学哲学/名古屋大学)

「脳画像の認識論−脳画像を用いた認知研究の落とし穴−」

〇岩城晃久(美学/関西学院大学大学院)

&真下武久(メディアアーティスト/成安造形大学)

「脳・メディア・芸術」

休憩(10分)

第二部:脳/美学の系譜学 (15:00~)

〇唄邦弘(美学/神戸大学大学院)

「原始の心―認知考古学的アプローチの諸問題―」

〇門林岳史(表象文化論/関西大学)

「神経美学の批判的系譜学」

 

休憩(10分)

全体討論 (16:10~)

発表要旨

    井上研「脳画像の認識論−脳画像を用いた認知研究の落とし穴−」

fMRIやPETなどの脳機能イメージング研究は、認知や言語などの高次認知機能の解明に大きく貢献している。近年その研究領域はより複雑な行動における神経的基盤の解明へと広がりを見せている。経済活動(神経経済学)や投票行動(神経政治学)などはすでに多くの研究がなされている。美的判断や美的経験の神経科学もまた「神経美学」として研究が始まっている。しかし、脳画像から高次の認知機能について何が言えるのかは極めて微妙な問題である。脳画像から何についてどこまで読み取れるものなのか。本発表ではfMRI研究を取り上げ、その原理を解説した後、その限界を定める要素、脳画像の解釈にかかる問題について考察する。

    真下武久×岩城覚久「脳・メディア・芸術」

今日、それが私たちの心に対応しているか否かにかかわらず、脳波や脳血流のデータ(物質)はテクノロジーを通じて「知覚」され、「行動」へと延長され、「情動」へと折り返されている。このような状況下で、私たちは脳=データとのあいだにどのような回路を構築することができ、またそれは、私たちのイメージ経験をどのように変容させるのだろうか。本発表では、メディアアートの諸実践などを手がかりとしてこうした問題を考えます。

    唄邦弘「原始の心―認知考古学的アプローチの諸問題―」

19世紀のネアンデルタール人の発見以降、考古学者たちは、遺跡や遺物の分類・体系化を通じて、原初の人間の姿を明らかにしようとしてきた。それに対して、近年の認知考古学では、考古学的な資料の不確定さを補うために、先史時代の人々の心に注目している。その前提となるのは、脳の発達段階と心の発達とのパラレルな関係である。本発表では、19世紀から現代に至る先史学において、脳機能の解明がどのように「心」の起源の解明に利用されたのかを明らかにすることで、現在の考古学と認知考古学という二つの学問が陥っている諸問題を明らかにしてみたい。

    門林岳史「神経美学の批判的系譜学」

近年議論され始めている神経美学/神経系美術史の言説において、「美」というカテゴリーはどのような場所を占めているだろうか。そこで目論まれているのは美的経験を外部から観察可能な脳の機能ないし現象に還元し、そのことで「美」が占めるべき場所を超越性から実証性へと移し替えることだろうか。しかしながら、こうした「美」をめぐる超越性と実証性の抗争は、こんにち初めて演じられているわけではない。本発表は、前世紀転換期の美学/美術史言説を振り返り、そこで心理学という新しい学問が「美」にどのような転位を迫ったかを検討することで、神経美学の射程を批判的・系譜学的に考察する。

 

研究会ポスター

 
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